神の手

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 とにもかくにも現状蔓延(はびこ)った汚れを、まず綺麗にしなくては、問題提起をするにも上手くいきません。いくら私が語ってみたところで、奇妙な理想家か、夢ばかり見ている未成年の社会批判と同程度にしか、受け止めてもらえません。  ――やあ。ようやく興味を持ってくださいましたね。可笑しいですか? 結構。あなたがあなたの知っている範囲の物事に私の言葉を照らし合わせ、馬鹿な話をと思ってつい吹き出したのだとしても、どうあれ笑いは親近感を及ぼす道具ですからね。  あなた。あなたですよ。いい加減にしてくださいませんか。後少しだけですから聞いて下さいな。  あなたは日頃、漠然とした不安にさいなまれることはありませんか。  自分の居場所に、自分の居場所ではないような違和感を覚えた経験は、ありませんか?  仮にそつなく平凡な生活をこなしているとして、クラスメートや同僚、友人や恩師を、自分の知らない誰かのように遠く感じたことは。自分がやらなくてはならない物事を、どこかの誰かにやらされているように感じたことは?  血を分けた家族からしていらない縁で、自分は産まれたいと願った覚えはないのに、何故あくせく生きなくてはならないかと、自分や他人を疑い煩悶(はんもん)した経験は、あなたに一度もないでしょうか。  殺したい死にたいだなんて、しょっちゅう文字にしているのでしょ。  ほらご覧なさい。図星でしょう。思い当たるふしがいくつもありましたでしょう。
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