巻の一 プロローグ

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 最近見る夢は、この事ばかり……。  去年兄様が突然家督を継がないと、綾小路家に伝わる魔を封印出来るという刀と共に出奔してしまった夢……。  朝の目覚めが、一気にブルーなものに――。 「またこの夢――。  昨日のお父様の話のせいだわ……」  ―― 昨日の夕食時。 「桜琢磨が出奔してしまった今、家督と夜魔討伐はお前に継いで貰わなくてはならなくなった」  突然のお父様の言葉。 「お言葉ですがお父様。  私では役不足ではないでしょうか?」  私は父の提案に反論する。  家督を継ぐことは、兄様を完全に諦め見離す事。 「―― 私としても、苦渋の決断なのだ。  KYOの都を守る為には仕方のない事。  桜察してくれないか……」  お父様の何ともいえない、悲しそうな顔……。 「お父様――。  私にどこまで出来るかわからないけど、このお話受けさせていただきます」 「そうか受けてくれるか」  お父様には悪かったけれど、受けたのは兄様を捜す為……。  兄様は何故突然出奔してしまったのか――。  そして家督を継ぐには、私の封印術士としての力の他に、兄様が一緒に持っていった夜魔を封印する、あの刀が必要だったから……。
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