春の風に吹かれて

10/44
前へ
/46ページ
次へ
気付けば会場の誰もが男の一挙手一投足に注目している。それは出身国が当たる度に歓声が上がるまでになっていた。 そして、男が最後の留学生の出身国がウガンダ共和国であることを当てた時、観客のボルテージは最高潮に達し日本を壊さんばかりの拍手が巻き起こった。男を讃える拍手は10分程鳴り止まなかった。男が最高に輝いた瞬間である。 しかし、15分程経ったあたりから観客は盛り上がりの度を超えだした。拍手をし過ぎて腱鞘炎を起こす者も現れ、誰も収拾がつけられない状態になってしまった。 ここまできたら、もう誰も男のことなんて気にしていない。声をかける者もいない。観客は観客同士で勝手に盛り上がっているのだ。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加