春の風に吹かれて

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どうでもいい回想が長かったためネパール人は一人で勝手に態勢を立て直し、男の前で話が進むのを待っていた。男も話を進めていいのか戸惑いながらチラリとこちらを見てからネパール人に声をかけた。 「大丈夫ですか?」 「ええ大丈夫です。」 なんとも当たり障りのない会話であるが、出会ったばかりの日本人とネパール人では許容範囲である。 男はそのまま立ち去るのも味気ないと思い話を続けた。 「どこの国から来はったんですか?」 男は既にネパール人という事を知っていたが、外国人を見たら取り敢えず出身国を聞くのが世界の常識であり礼儀であると信じていた。それは、国の威信を賭けた万博事業で歌の盗作なんてことはしない、というくらいに世間に知れ渡っている常識と信じていたのだ。
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