その男は死にたがる

春の風に吹かれて

２人は国道沿いのファミリーレストランに入った。

祇園はどうなったのか。芸者遊びはどうなったのか。

振り返ること１時間。２人は夕陽を浴びながら自転車をこいでいた。祇園へ向けて。頭の中が祇園で一杯であったネパール人は５人の老人とぶつかり２人の買い物帰りの主婦とぶつかった。ぶつかった老人の１人は、先ほどぶつかった老人と同一人物であった。無事、孫へお金を振り込んだ帰りであった。しかしそのやり取りは老人と孫との秘密であったので誰もその事は知らない。

この様に人にぶつかりまくっていたせいで大幅に時間をロスしたのだ。この様に書くとネパール人だけが悪い様に思われるかもしれないので、ネパール人の名誉の為に補足しておくと、すれ違った１組の高校生カップルに妬みの目を向けていたせいで信号を無視してしまい自動車にひかれかけ罵声を浴びせられたのはネパール人ではなくかっこつけの男であった。