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日もとっぷりと暮れて、街灯が通りを照らし出した。すれ違う車もライトをつけている方が多くなってきた。
こんなペースでは祇園にたどり着くのは恐らく2日後の朝方だろう。そもそも自転車で向かうのが少しおかしい。男がそう思い出した頃、前方にファミレスが見えた。
「もうあそこにしません?」
男はネパール人にそう問いかけた。ネパール人は黙って頷いた。もうどうでもいいようである。男は内心ホッとした。当たり前である。男の財布には2千円と小銭が少々しか入っていなかった。ATMでおろせるお金だってたかだか知れている。祇園に行ったろころで知っているお店なんて1つもない。
仕方なく入ったこのファミレスが男にとって最良の避難地であった。ネパール人はファミレスが何かをあまり分かっていないらしく、一応高級レストランと思っているのも男にとって救いであった。
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