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「ビーフミートドリア ボローニャ風を1つ。」
男がこじゃれた料理を頼むのはほぼ分かっていた事であった。本来ならばハンバーグライスなぞを頼みたいのだが、そんな願望はおくびにも出さず眉一つ動かさず、胃が欲している料理とは全く異なる料理を口にする。その姿はさながら笑顔で握手をしながら机の下では蹴飛ばしあっている外交官の様でもあった。
男のかっこつけ精神は最早あっぱれの領域にまで達していた。これ程に地味な努力をしている人間が世の中にどれ程いようか。しかし悔やまれるべきは誰一人彼に注目していない事であった。そう、目の前に座っているネパール人でさえ。
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