春の風に吹かれて

3/44
前へ
/46ページ
次へ
男は不細工な店員にエスプレッソを頼んだ。先程は木漏れ日の中を歩いていると記したが、あれは全くのこちらの勘違いで本当はスターバックスにいた。スターバックスのあの外にあるかっこつけが座る席に座っていたのである。周りにいるかっこつけと同様、この男もかっこをつけてエスプレッソを飲むことにした。ただ間の悪いことに注文を受けた男性店員の顔が不細工だった。この店員、スターバックスで働いている自分を格好いいとでも思っているらしく、妙に気取って歩いている。ただそうでない事は政治家の約束が守られないのと同じくらい明らかであった。 男は折角かっこをつけて外の席でエスプレッソを飲もうとしたのに、この思い込み店員のせいで台無しである。しかし喜ばしい事に誰一人彼には注目していない。現在視聴率ゼロである。 国道沿いのこのスターバックスは排気ガスの宝庫であり、排気ガスを楽しみたくなった人間は随時ここへ来る。通例通りこの男も排気ガスをたっぷり含んだエスプレッソを味わった。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加