春の風に吹かれて

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西日が眩しいステージ上に男は立っていた。観客は数え切れない程集まり、後ろの方では屋台が焼き鳥を売っている。 ただ、ここにいる観客の大多数は何の大会があるのか全く知らず、単に賑やかなお祭り騒ぎに興味を覚え集まっただけであった。 約二十人の留学生がステージに上がる。日も大分傾いてきた。観客達は続々とステージに上がっていく外国人たちを見て、これから何が始まるのかと静まり返った。 会場の緊張が最高潮に達したその時、男は静かな声で「フランス。」と発した。すると一番端の外国人は両手で大きく丸を作った。 観客達はこの大会の趣旨を理解した。そして、そのあまりにも下らないイベント内容に愕然とし大ブーイングが巻き起こった。しかし男や留学生達は一切悪くない。勝手に立派なイベントを想像していた観客が悪いのだ。
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