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母親とやり取りを続けることで時間を稼ぎながらも、裕介はマウスとキーボードを巧に使い的確に相手のキャラクターに技を放ち、少しずつ黒ローブの魔法使いのHPを削っていく。
しかし、これはギルドとギルド、つまりチームとチームの戦いであり、敵ギルドには回復魔法が使える支援キャラが生きている。
その為、裕介のキャラクターのHPは徐々に減少していく一方、黒ローブの魔法使いのHPは回復支援キャラの魔法により瞬時に全快となってしまう。
「ちょ、これは無理だろおい」
いくらこのゲームを三年もしてきた裕介でも、同じくらい強い敵が相手では接戦になる。にも関わらず、敵は回復支援キャラの他にもまだまだ残っている。
こっちはいつの間にか裕介以外みんな全滅。絶望的である。
「あと十秒で降りて来ないとご飯なしだよ!」
絶望的である。
「母さん! 十秒は無理! 一分待って!」
母親からの無茶な最終通告と裕介のキャラクターが倒されたのは同時であった。画面に『あなたのギルドは敗北しました』という分かりきった事をぬかす画面に「知ってるよ!」と言って、今まで共に戦っていたギルドの仲間に「AFK」とキーボードで入力して伝え、直ぐさま階段を駆け降りた。
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