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その3人、転入生。
「灰薔薇、玖楼、氷青、呼んだら入って来い。」
キツい薔薇の香水の香り。
整えられたオールバックの髪と身なり。
首に巻かれたスカーフ。
この男がこれから3人の転入するクラスの担任だ。
『はい。先生。』
聖は愛想の良い笑顔で答えると、担任の教師は教室内に入って行った。
「ゴホッゴホッ。」
嵐は今まで我慢していたが、担任の教師が教室に入った途端無表情のまま咳き込んだ。
嵐は吸血鬼だ。
吸血鬼は犬よりも嗅覚が優れているので仕方かたがない。
人間でも、臭いと思う香水の香りを人間より嗅覚の優れている犬が嗅いだら臓物を吐きかねないくらいキツい香りだったのだ。
『嵐…よく我慢できたな…。』
普通の人間並の嗅覚である、聖や翔も顔をしかめハンカチで鼻を抑えて居たのに
嵐は若干顔を青白くさせながらも無表情のポーカーフェイスを保っていたのだ。
「え…ええ。ゴホッゲホッゲホッ。」
嵐は激しく咳をしながら、苦しそうに答えた。
「大丈夫ぅ?嵐」
嵐や聖より背が低い翔は嵐の背中をさすって上げていた。
『嗅覚が優れているってのは意外に不便だな。』
聖は嵐を哀れみながら教室の扉を見詰めていた。
「氷青、玖楼、灰薔薇。入って来い。」
3人は担任に呼ばれ、軽く返事をし、聖を先頭に嵐が翔に支えられながら教室に入って行った。
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