目覚め

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「捕虜を虐待していて逆にのされかけるなんて、誇り高きアメリカの鋼の乙女として、あってはいけない事何ですから。」 双子の乙女は混乱していた。 あのとき、そのまま落ちれば、確かに心中していたのは間違いなく事実。 だがそうならなかった。 「あいつ、あの時ボクたちが近づいた時には、もう捕まえる体勢でいた。」 「だけど捕まえて直ぐに訳の分からない事を言ったわ。」 双子の言葉にルリも首を傾げる。 「訳の分からないことですか?」 「そう、あの時あいつは『さっきまでなら、殺されて、このままなら殺し合った。でもこうすれば、俺が落ちれば俺が落ちて死んだだけだ。』って言ってた。」 「なんですって!?」 ルリはこの言葉の意味を理解して、なお驚いていた。 それはつまり、双子を庇ったという事になる。 ただの捕虜虐待ではなく、たまたま燃料の無かった航空機が、むちゃくちゃな条件で戦って勝手に落ちた。 そういうことになる。 敵ですら庇うなど、ルリには理解出来ない事だった。
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