帰還する戦士

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ランは、ルリの目線を受ける。 「構いません。質問があるのなら受けますよ。」 「あの…先ほどのレイジさんへの行為は、わざとやったものですよね?」 ランのこの質問に反応したのは、ルリではなくマーリン。 「意味が分かりません。何故そんな見せしめのような行為を働かなければならないのですか?」 マーリンの質問に、他のアメリカ海軍の乙女達も頷く。 「確かにその通りだぜ。懲罰なら他にも方法があっただろ?」 「みんなの前でボコられるなんて、レイジがかわいそうだにゃ。」 「自分もネコさんに同意するであります。懲罰にしても、あのような見せしめに等しい行為にする必要は、どこにも見えないであります。」 マーリン、アメリカ海軍をはじめとしての他の鋼の乙女達による反論。 しかし、ランには確信があった。 レイジを助けるだけではなく、無事に連れ戻すために、ルリがわざわざあのような形をとったのだと。 「皆さんの気持ちは私も解ります。私だって、レイジさんをかわいそうだとも思います。」 一呼吸してから、ランはさらに言葉を紡いでいく。 「だけども、軍法会議にかけられれば、レイジさんは最悪の場合は廃棄処分か、それに等しい罰を下されていたかもしれないです。」 そう、敵に捕らえられたレイジには、帰還した後にそうした処分を下される可能性があったのだ。 もし、それを免れようと彼はこの場に戻ることなく、別の場所に連れていかれる可能性もあった。 「だからこそ、必要だったんだと思います。そうした決定を下す方々を納得させるためにも、その人達をその気にさせないくらいの何かが。」
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