偽り

3/31
前へ
/71ページ
次へ
「…~であるからして…」 退屈な授業中。 先生の目を盗んでは携帯を開く。 カチカチ… 受信メール5通。 全部サイトから間接的に送られてくるメール。 一つ一つメールを開いては、女の子らしい可愛い返答を頭から絞り出し、返信する。 「なつきちゃんは彼氏居るの?」 なつきは、創造された人格。 私じゃない人格だから、嘘もたやすかった。 「しばらく居ませんよ(T_T)」 こうしたら、ある程度の人はまた返信してきてくれるから…。 確かにサクラだと何度も疑われ、メールのやりとりが途絶えた相手は沢山いる。 でも、私にとってビジネス。 去るものを追っている暇もなければ、興味もなかった。 カチカチ… カチカチ… 「-きっ?」 ぼーっと携帯をいじっているとかすかに声が私の耳に届いた。 ぱっと上を見上げると、そこには真里が居た。 「由紀?」 「へっ?なっ…何…?」 反射的に携帯を閉じる。 不思議そうに真里がゆっくり口を開く。 「…なにしてるの…?」 「え?あ~えっと…」 私の不純な行動を軽蔑して見ているようにも感じられる視線に、目をあわせて居るのに耐えきれず、ぱっと目を反らす。 バレちゃった…かな…。 肩をすくめて俯く。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加