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突然近くで大爆発が起こり、二人は爆風で出来た砂塵に巻き込まれる。
爆風のせいか、まともに動けない上、お互いの安否を確認をしようにも爆発音と風の切る音が重なり、ゴウゴウと爆音が鳴り響く。辺りを確認しようとすれば砂塵が吹き荒れている為、下手に目を開けると失明の恐れもある。
身動きが出来ず、風に吹き飛ばされて孤立するのを避ける為、二人共クレーターの縁にしがみつく。
何も出来ず、二人にとって長い数十秒間が経った直後、ほんの一瞬だけ風を断ち切る音が頭上に鳴り響いた。
それと共に砂塵によって隠れた太陽の陽射しが閉じた瞼の裏側でも感じる程に眩しく照り付ける。
その眩しさに思わず目を開けると、そこには雲1つすらない清々しい晴天が広がる。
その風景に魔導師は一瞬、自分が戦場の真っ只中にいる事を忘れ只、目の前に広がる景色に圧倒されていた。
「………お~い。聞こえてますか~?」
声を掛けられてようやく我にかえると弓兵の姿がそこにあった。
「……あぁ、すまない。なんだ?」
「変だと思わないか?何一つ物音が聞こえない………聞こえるのは風の音だけだ」
「さっきの砂塵も吹き飛ばすしな………そんな事が出来るのは……」
「しっ…………なにか聴こえる」
魔導師の言葉を遮る様に忠告した後、自分の口元に人差し指を立てて近付けながら片方の手で聞き耳をたてる。
「………聴こえないか?断続的に風の音が聴こえる……それにどんどん大きくなってきてる」
「みたいだな」
『それ』は高速で二人に直進する。背部のブースターを時折噴かしながら。
『それ』は遠くでも視認出来る程の大きさだった。軽く巨人並の大きさはある。
『それ』は二人の前で唐突に停止した。風を纏わせながら。
『それ』はマイク越しであろう、少しエコーの入った男性の声で「君達の所属国は何処だ?」と聞いた。胸部が開き、中から人が出てきながら。
『それ』は「アザルトです」と答えた二人を乗せた。男が碧の長髪を靡かせながら。
「こちらハウリングウィンド。生存兵を救護した…了解、直ちに帰還する。……よく頑張ったな。俺はヤムル周辺地域を任されたAA部隊員、ムゥだ。よろしくな」
『ムゥ』と名乗るその男は二人に向かって笑みを浮かべながら、握手を求む様に手を差し出した――。
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