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アザルト連邦作戦本部。元々各国の住民が反旗を翻し結成された、言わば「レジスタンス」の類いに入る軍なのだが、なにぶん国の軍ではない為、所々整備が不十分である。
その中でも、木の板に「アザルト連邦軍作戦本部」と書かれた看板を掲げた、大きいながらもお粗末なテントの中は常に人の活気に溢れていた。
その中央、大きなテーブルの周りには二十個程の質素な椅子が並べられていた。内、数人が椅子に座ってテーブルに戦場の地図を広げ、時折地図のある場所を指し、身ぶり手振りで説明している姿も見える。どうやら今後の作戦を会議していた。
「――という訳でこの戦場にはカナリナ少尉と隊長に向かってもらいます……何か質問はありますか?」
作戦の内容が書かれた紙が貼られた壁の前を肩までありそうなきらびやかな金髪を、歩くリズムと一緒に揺らしながら、ぶかぶかのハイヒールを履いてコツコツと響きの良い音の中に時々ズレた音を織り混ぜながら歩く。中央まで歩くとピタッと止まって椅子に座る人達の方を向くと、どう見てもサイズが大きい眼鏡のフレームをわざとらしく持ち上げながらレンズを光らせる。
セクシーな女教師をやっているつもりなのだがあまりにも格好が大人すぎて似合ってないその人物の名はメリー。アザルト連邦の特殊部隊「神風」の作戦参謀である。
「はいは~い!」
「はいっ、そこのカナリナ君!なんでしょうか?」
元気よく手を上げ、メリーがここぞと言わんばかりに指を指し、指名されたこの人物はカナリナ。同じく「神風」の部隊員である。
「なんで隊長と一緒なんですか~?別にこのくらいなら俺一人でもいけるのに……」
声色と表情から分かるぐらいに不満げにしている。
「だって貴方は部隊の中でもまだ経験が浅いじゃない?いくら才能や機体性能が凄いからって油断や慢心は禁物よ?」
メリーも少し困った様子で今回の内容の意図を説明していく。が、それでもやはり不満そうな態度は変わらず、俯いている。
「う~ん…今回だけは我慢して?誰にも死なれたくないからさ」
ようやく分かってくれたのか、しぶしぶ頷き、承諾した。
「はい」
「はい、ムゥ君」
「なんでそんなカッコしてるん……」
「しからば!!」
相手の言葉を強引に遮る様に一言残すとあっという間に何処かへ走り去っていった。
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