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グラウンドを見下ろすと、これからの僕の行動に興味が湧いたのか大勢の人が群がっていた。野次馬精神というのは不思議なもので、僕のことを疎ましく疎ましく疎ましく思っていて、害悪を排除するという論理の破綻した大義名分のもと暴力行為を実施してきた自称掃除屋の不良たちや、僕をいないことにしている善良な一般生徒たちもそこにいた。
何故みんなそんなに注目してくるのだろう。何故みんな僕に視線を集中させているのだろう。ただ学校の屋上の防護網を乗り越えてそこから地上に自由落下して重力と大地に打ちのめされて人生の終了を華々しく迎えようというだけじゃないか。ただ、それだけじゃないか。それのどこにわざわざ鑑賞する価値があるんだよ。
まとわりつく好奇に緊張や恐怖といった感覚を侵されながらも、僕は無事落下を阻む網を乗り越え、死を望める場所へと辿り着いた。
思いというのはやはり行動に移さないと明確な在処がわからないもので、死を間近にした途端、僕の体は歓喜に震えた。なんだ、やはり僕は死にたいんだ。
ガチャリ。
後方からの音。振り向くとそこには熱血で有名な学年主任の秋山先生が学校から屋上へと通じる扉を勢いよく開き、僕のいる屋上へやってきたところが視認出来た。おそらく騒ぎを聞き付けてやって来たのだろう。
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