この青空に『 』を委ねて

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 冬風が、吹いてきた。高い位置にいるからなのかいつもより寒く、筋肉が体温の低下を阻止しようと指示してもないのに勝手に震える。  くそ、動くなよ筋肉。まるで僕が地表へのダイブを恐れてるように見えるじゃないか。  大体僕はここにたったときに歓喜で体を震わした。そんなの、本当に死にたくないとあり得な――  待て。僕は本当に『歓喜に』震えていたのか? あの時僕は大人数の視線も相まって、一種の興奮状態にあった。だから感情がハイになってて、冷静に自分を推察なんて出来るわけがなかったんだ。  じゃあなんだ。僕があの時震えていたのは歓喜にじゃなかった? 死が怖かったから?  僕は本当は死にたくなかった?  全てを否定されたかのような喪失感。愕然とした感情は肉体にも反映され、僕の意思とは無関係に膝からバランスを崩していき、  落下、そして反転。  広々とした澱みのない青を築いているのが大地で、人で溢れ返ったグラウンドが空。逆さまになった世界でも僕の居場所はなくて、ふわふわと漂うことしか出来ない。  足下から響く声。先生の絶叫。僕はそれから逃げるように、高く高く空へと舞い上がっていく。  だけど空には天井があって、やがてぶつかってしまった。頭から衝突した僕は頭蓋骨を砕き背中の骨を折り腕と足の骨は地面の迎撃に耐えきれず折れてしまい、それらの傷跡からはまるで風船が爆発したかのように血が噴き出していく。  絶え間なく流出していく僕の命。それはきっと致死に値する量だった。 「高木先生!」  誰かが、僕の名前を呼んだ。その声につられ、僕は周囲を見る。  ぐしゃぐしゃに壊れた僕の周りでは生徒たちが狂乱していた。目の前に映る死に恐怖し逃げ惑う人、物珍しさから携帯のカメラで僕を撮影する人、何も出来ずただ目の前の惨状に唖然とする人。  誰も、僕を助けようとする人はいなかった。  僕は――
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