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何だか騒がしい。
たくさんの人と人が話したり笑ったりしているようだ。
「な、そう思わね?」
「──へっ?」
目を開けるとわたしの目の前には男子二人がいる。
馴れ馴れしそうに笑いかけてくる男子に疑問や不審を抱きながら、わたしはとりあえず頷いておくことにした。
「あ、あぁ。……ん?」
わたしは自分の声がおかしいことに気付き、首を押さえる。
何度も「あー」とか「うー」とか言ってみているわたしをきょとんとしながら眺める男子二人。
声が、わたしの声じゃない。
低くてなんか男みたいだ。
「オ、オレ…へっ!?」
いつからわたしの一人称は“オレ”なんかになったんだろう。
クエスチョンマークを無数にも浮かべているわたしの他にも前に立って首をかしげている二人も同じようだ。
「どうしたよ、おかしくねーか?」
「大丈夫かよ、空音」
「そらねって…オレのこと?」
自分を指差すと、男子二人のうち一人が肩をすくめて「お前以外に誰がいんだよ」と笑みを見せてくれた。
全く知らない二人だが、悪いやつには思えなくて釣られて笑みを見せる。
「蒼次隊長!今日の空音隊員は頭のネジが抜けきっているようです!」
「お、おい、何だそれ…!?」
「でかした紅也副隊長!きっとネジは女子更衣室にあるはずだ!」
「んなわけあるかぁ!!」
だってわたしは仮にも女なんだから。
仮にもってなんだ。
本当は女じゃないのか、自分。
と、考えているうちに愉快そうにケラケラ笑いながら駆け出した蒼次と紅也を追いかける。
あれ、わたしって。
いつの間にか、笑ってる。
だって、何だか楽しいんだもん仕方ないよね。
男って良いね、何も考えないで一緒にいてくれる。
女なんて。
わたし、初めから男に生まれてればよかった。
そうなっていればこんな早くに死んでなんかいないし、あのクルニィってやつとかにも会ったりしなかったし。
ふと、クルニィで思い出す。
あの大地ってやつ、今どうしてるんだろう。
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