傷痕ノ雨粒

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人通りの少ない道にわたしは一人立ち尽くしていた。 空からは容赦なく雨粒がわたしの頭、鼻、肩、手のひらなどを叩く。 まるで空がわたしがこれからしようとしていることを阻止しようとしているようだ。 わたしは小さく笑みを漏らす。 バカみたいだ。 わたしが決めたのに。 今更、誰かに止めてほしいと思っているだなんて。 「ホント、…バカみたい」 今にも泣き出してしまいそうな震えた声を発するのを止めて、わたしは右手に握りしめていたものを両手でしっかり握る。 曇り空のせいで鈍く見える新品のナイフを逆手に持つ。 わたしは目を閉じて、二度ほど深呼吸をしてから覚悟を決めた。 「これで、終わりだ」 わたしは両手で握ったナイフを。 わたしの喉元に突き立てた。 痛みなんて、感じない。 今までの心の痛みに比べたら、これくらい堪えられる。 水溜まりの上に仰向けで倒れて、暗くなっていく視界の中。 わたしは最期の曇り空を見た。 目の中に雨粒が入って反射的に目を閉じてそのまま。 わたしは闇へ堕ちた。
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