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目の前には柵のせいで線が入っているがなんとか顔が見れた。
どうやら左右に揺らした犯人はわたしと同い年か一つ上くらいの男がわたしを見ている。
しばらくたっぷりと時間をあけてから嫌そうな声で「何?」と言ってやった。
だが、男は何も言われていないかのように平然としている。
それ以前に元から無表情で、何も変わっていないだけなのかもしれないが。
すると、ふっと体が軽くなったような気がして、まず手を握って開いてを繰り返そうとしてみる。
グーパーグーパー。
体が思い通りに動く。
何故だ、意味不明だ。
とりあえず右手を使って上半身を起き上がらせると、男はわたしの顔以外興味がないのか顔から目を離さない。
そのため、起き上がると男の顔が動く。
わたしは顔を右に動かすと、男の顔も右に動いた。
次に左に動かすと同じく。
「ねぇ、生きてんの?」
「生きてる」
「うわ、喋るんだ」
本当に生きているのか不安になったため問いかけてみると、短く反応した。
短かったが、よく通る聞きやすい声だ。
少し笑みを含めて言ってみても、何ら反応もない。
表情も変えやしないし、また黙り込むし。
本当に生きているのか?
男は表情は変えなかったがハッとしたようにわたしは見えた。
ハッとしたように振り返った男の視線を追うようにわたしも奥を覗き込む。
「やーや、おめでとう二人共」
わたしは何あれとか言いたそうな顔をわたしと男以外の人物に向けた。
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