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冷子は会社を辞めた。
短大を卒業し、三年働いた会社。
たった三年間だが、人間関係に悩まされた時期もあり、プライベートも充実しておらず、冷子の気持ちは清々していた。
特に大きな理由が会った訳でもない。
贅沢だが疲れて仕事にやる気がなくなっただけだ。
冷子は明るく、見た目もさほど悪くない。人間的な優しさや思いやりは忘れない、人には好かれやすい人間だった。
ただ仕事では無理をしやすく、会社にはうまい話しをして辞めた。
実家を離れ、姉と二人暮らし。
毎月家賃や欲しい物でお金もなかなか貯まらなかった。
悪い所は金銭管理が下手だ。
お酒が好きでタバコも吸う。
お金はないくせに、自分よりもお金のない男と付き合うことが多かった。そんな自分にも嫌気がさしていた。
ある程度お金もあって、大切にしてくれる人と出会い、幸せになりたい。
こんな思いが日々募っていた。
退職した日、姉の舞子に愚痴をこぼしていた。
「なんかやる気でない。しばらく自由に働くから、時給いいバイトして節約してお金も貯めるよ」
「勝手にして~。私も自由だし」
「学生ん時、夜の仕事してたじゃん?それする」
「わっ。また夜。」
「いいじゃん別に。お母さんには絶対内緒ね」
どうせ働くなら、拘束時間も少なく給料のいいところに…
遊びたい。お金を貯めたい。なんだか気分が上がってきた。
両親は夜には偏見を持っていたので、しばらくは退職金と派遣の仕事でもして生活する、と伝えていた
夜のバイトをする。
この選択が今思えば大きな大きな大きな間違いだった。
一週間後、学生の頃のつてで、友人から紹介されていたミニクラブで働き出した。
とても落ち着いたお店で冷子は気に入った。
名前は源氏名が面倒で冷子のままにした。
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