出会い

2/6
前へ
/41ページ
次へ
冷子は会社を辞めた。 短大を卒業し、三年働いた会社。 たった三年間だが、人間関係に悩まされた時期もあり、プライベートも充実しておらず、冷子の気持ちは清々していた。 特に大きな理由が会った訳でもない。 贅沢だが疲れて仕事にやる気がなくなっただけだ。 冷子は明るく、見た目もさほど悪くない。人間的な優しさや思いやりは忘れない、人には好かれやすい人間だった。 ただ仕事では無理をしやすく、会社にはうまい話しをして辞めた。 実家を離れ、姉と二人暮らし。 毎月家賃や欲しい物でお金もなかなか貯まらなかった。 悪い所は金銭管理が下手だ。 お酒が好きでタバコも吸う。 お金はないくせに、自分よりもお金のない男と付き合うことが多かった。そんな自分にも嫌気がさしていた。 ある程度お金もあって、大切にしてくれる人と出会い、幸せになりたい。 こんな思いが日々募っていた。 退職した日、姉の舞子に愚痴をこぼしていた。 「なんかやる気でない。しばらく自由に働くから、時給いいバイトして節約してお金も貯めるよ」 「勝手にして~。私も自由だし」 「学生ん時、夜の仕事してたじゃん?それする」 「わっ。また夜。」 「いいじゃん別に。お母さんには絶対内緒ね」 どうせ働くなら、拘束時間も少なく給料のいいところに… 遊びたい。お金を貯めたい。なんだか気分が上がってきた。 両親は夜には偏見を持っていたので、しばらくは退職金と派遣の仕事でもして生活する、と伝えていた 夜のバイトをする。 この選択が今思えば大きな大きな大きな間違いだった。 一週間後、学生の頃のつてで、友人から紹介されていたミニクラブで働き出した。 とても落ち着いたお店で冷子は気に入った。 名前は源氏名が面倒で冷子のままにした。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加