ユメ

9/32
前へ
/83ページ
次へ
その日から、 翠ちゃんは毎日 夢に出てきてくれるようになった。 お通夜もあった。 お葬式にも行った。 でも夜になれば、 いつもと変わらない 翠ちゃんに会えた。 だから、 悲しくなんてなかった。 翠ちゃんは死んでない。 俺の夢の中で生きてる。 少しでも空き時間が出来れば、 すぐ寝るようになって。 休みの日も 釣りも行かないし、絵も描かない。 翠ちゃんとの時間に 全てを費やしたかった。 思いのほか元気な俺の様子を見て、 みんな安心してるみたいだった。 恋人が死んでんだ。 きっと立ち直れないぐらい 落ち込むと思ってたみたいで。 でも、一人だけ。 クロだけは 何かを見抜いてた。 ずっと俺のそばを離れないの。 ゲームしながら、 俺の様子を観察してる。 いつも知らないフリをして、 寝てる俺を 一体どんな目で見てたの? .
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

402人が本棚に入れています
本棚に追加