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「帰った…?」
調理室の片付けを終わらして
帰り支度を整えてから
そのままテニス部である男子3人が迎えに来るのを待つ
それが私たち6人の中等部時代からの放課後の日常
しかし調理室の扉を開け入って来たのは
翔くんただ1人だけだった
「新しいグリップテープ買いに
いつもの駅前のスポーツショップ行くとか言って
剛志引っ張ってさっさと行っちまった」
「……そう」
別にこういうことが初めてというわけでもないし
私だって何か用事ある時は桜子たちに伝言頼んで先に帰ることもある
ただ今日はリオパパが居ない日で
何よりさっきからグルグル頭の中を廻っていることたちを
少しでもいいから聞いてもらいたかったから
翔くんの言葉にショックを隠せずに俯いていると
「帰ったって、夕飯のこととか
理男くん何か言ってなかった?」
私の変わりに美羽ちゃんが聞いてくれたが
「そーいやぁ、駅前に旨いラーメン屋見つけたから
ついでに行こうとか去り際に言ってたような…」
その答えは私を更に落ち込ませた
「それじゃあ4人でカフェでもよろっか
いつもの店の新作ケーキまだ食べてないってルミちゃん言ってたよね?」
そう言う桜子の声も少し上擦っていて
気を使っているのがわかる
桜子がわかるってぐらいだから
私ものすごく露骨な顔しているんだろうな
「ううん、ママに伝えなきゃいけないし
今日はまっすぐ帰ろう」
ママへの連絡は電話でも出来るけど
さすがに今日はケーキ食べながら皆でワイワイとかは無理だ
「う…うん」
小さく頷く桜子、その後ろで美羽ちゃんも翔くんも
心配気に私を見ていたので
私は精一杯の笑顔を作って言った
「大丈夫だよ!皆ありがとね」
そしてゴメンね…
相談出来なくて
皆のこと大好きだし信頼もしてる
でももうちょっと待ってて
私に話しをする勇気が出来るまで
あともうちょっと…
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