苦悩のケーキセット

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それからは皆、詮索もせずに 適当な雑談をしながら昇降口へ向かった それが私への気遣いだと分かっていたから 私もあえて何事もないかのようにふるまった しかし校門を出てすぐに私の足は止まった 「どうして…」 思わず呟いてしまった 足元に血の気が引いていくのがわかる 私の目は歩道の脇に停車してあるその車に釘付けになった 学校には絶対に来ないでってそう約束しているのに その約束を反故にしてまで来るということは やっぱり『あっち』も『本気』なわけで 「瑠美花?」 立ち止まった私に美羽ちゃんが気づき その声を合図に桜子と翔くんもこちらを振り返る 私は我に帰り今の状況がとってもマズいことに気づく このまま皆を連れてあの車の前を通ることは出来ない でも自分たちの進行方向にある車 皆を学校の方に反転させるいい方法が思いつかない こうなったら…この手しかない 「ごめん!!急用思い出したから先帰るね!!」 どんな顔すればいいかわからず 俯いたまま3人の脇をすり抜け走った 「えっ!?ちょっと瑠美花!!」 慌てて呼び止める美羽ちゃんの声が聞こえたが 私は振り向かずに走り続けた 多分みんな不審に思ってるだろうけど 言い訳は後でいくらでも考えれる ひとまずは今を切り抜けなきゃ そう思いダッシュで車の横を通り過ぎ 校庭沿いの角を曲がり皆の視界から消えた
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