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同時刻、瑠美花が親父さんと逢ってるなんて思うわけもなく
俺は剛志と一緒に行きつけのスポーツショップにいた
「本当にこれでいいのか?」
剛志の質問に手の中で購入予定のグリップテープをひらひらさせた
「あぁ、今のグリップじゃあ何か調子でなくてさ
やっぱり前使ってたのに…」
俺の言葉を遮る様に剛志が口を開いた
「テープの話しじゃなくて
今日の予定の話」
「…どういうことだよ」
何となく剛志の言わんとすることに
覚えがあるので少し声がどもった
「杉山に顔も見せずにここに来て
杉山ん家に行かずに俺とラーメン食ってお前は満足か?」
後半はうちの父さんの出張を知っているから出てくる言葉だった
「何でそんなことお前が知ってるんだよ」
「朝、杉山と大路が話してたのが聞こえた」
剛志は双子の事を翔は翔、美羽は大路と呼び分けている
朝、昇降口で逢った双子にも
自分からはそれを話していないので
つまり瑠美花が始めから知っていたことになる
多分父さんが元々あっちの家に連絡していたんだろう
俺は小さく舌打ちをした
出来れば知られずに気付かれずに
今日を終わらしたかったのに
「いいのか『ルール』なんだろう?」
俺は動揺を見抜かれたくなくて
他の商品を物色しながら適当に答えた
「別にもうガキじゃないんだから
親のいない時の自分の面倒ぐらい自分で見るさ」
「じゃあ何でそうはっきり杉山に言わないの?」
「………」
「そう言いながら寝坊してるし」
痛いところを突かれた
しかもこの会話の流れだと多分…
「チャイム3回も鳴らされたら普通起きるって」
やっぱり俺と瑠美花の会話も聞かれてた
ってか、こいつ今朝ずっと本読んでたよな
何で本読みながら周りの会話そんなに盗み聴き出来てるわけ!?
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