曖昧日和

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「なー、いーだろサクラ姫。」 「だーめ、しょーちゃんにおこられちゃう」 「デート一回ぐらいバレやしないって」 「えー、サクラ困ったなぁ」 とか言いながら全然顔が困ってないぞ桜子、 むしろ超嬉しそう。 朝の教室の自分の席の前で繰り広げられる男女の会話を 心の中で呆れのツッコミを入れながらも どこか羨望もこもった眼差しで様子をみていた。 今まさに目の前で口説かれてるのは、 中等部時代からの友人 姫乃木 桜子(ひめのぎ さくらこ) 先週この学校で開催された富丘大附属高校学園祭の毎年恒例目玉企画 ミス富高コンテストで 2年連続になるグランプリを受賞したご本人様だ そしてそんな桜子を口説いてるのは… よく知らない他のクラスの男子(そこそこイケメン) たしかさっき宇佐井とか名乗ってたっけ、 「あんなチビガキよりオレといた方が絶対楽しいって」 「チビガキって誰のこと?」 「そりゃ勿論オレと20cmも差があるプリティーフェイスのオージちゃんに決まっ…」 調子よくしゃべってた宇佐井くん(多分)の言葉がピタリととまり次第に顔が青ざめてく あーあご愁傷様 宇佐井くん(仮)の背後に立っていた彼、 大路 翔(おおじ かける)桜子をジロリと一瞥して尋ねる 「何やってんのサクラ?」 「んー?見ての通り口説かれてたの」 そう言って微笑む桜子。 彼氏にこんなとこ見られても 全く動じないのはさすがだ。 そんな感心をしながらも私の目は 翔くんの後ろで眠そうな顔でアクビをしているアイツ 芹川 理男(せりかわ りお)をバッチリとらえていた。 校内にチャイムが響いたのを合図に 宇佐井くん(?)はわざとらしく勢いよく立ち上がった 「やっべ教室戻らないとショートルームはじまっぜ」 ベタな説明ゼリフを吐き捨て逃げるように教室の扉から飛び出していった。
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