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「先週…病院で検査の結果が出たんだ…」
「病院っ…て、どこか悪いの!?」
パパの言葉にあっさりと強気の仮面がとれてしまった私
「いや、病気ってわけじゃない
検査を受けたのは産婦人科なんだ」
「産婦人科?」
頼りないけどれっきとした男であるパパが
産婦人科で何を検査するんだと思った
「そこは薫子が不妊治療を受けていた産科なんだけどな…」
聞きたくない名前の登場に私は再び表情を堅くすることが出来た
『薫子さん』はパパの後妻
ママと離婚した後にパパは一年もせずに再婚した
家の事情というかあの人の命令なのはわかっているので
そのことでパパを責める気はないが
やっぱりその名前が出るのはいい気分がしない
「薫子が子どもが出来にくい身体だってことは
前からわかっていたんだ
だから何年間も不妊治療の努力をしてきた…
でも原因は僕の方にもあった」
「どういうこと?」
「雪花との間ではすんなりお前を授かったし
お前はすくすく元気に成長したから全く誰も気付かなかったんだ…
僕も子どもが作りにくい身体だったんだって」
「えっ!?」
「精子の遺伝子情報を伝える能力が極端に弱いらしい
それでも若い頃なら何とかなったみたいだが…
現にお前がここにいるしな
だけど今じゃ僕も40手前のいいおっさんだ」
そういって自嘲気味に笑うパパが何だかいたたまれなかった
「医者にはっきり宣告されたよ
僕の件に薫子の身体のことも重ねれば
僕らの間に子どもが出来る確率は1%未満だって」
そう言ってまた苦笑するパパ
顔は笑っているのに心は全然笑っていないのがわかる
どうして無理して笑うのか私にはわかんない
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