曖昧日和

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「で、誰なのアイツ?」 リオの横にいたロングヘアの長身少女 大路 美羽(おおじ みわ) が尋ねると 桜子は少し考えて首をひねった 「えーと忘れちゃった」 そう言って極上の笑顔を振りまく桜子、 私たちはこれが小悪魔の微笑みであることは百も承知なのだが、 さっきの彼のようなその他大勢はコレでイチコロなのである。 桜子の様子を見て埒があかないと思ったのか、 翔くんは怒りの矛先を私と私の斜め後ろで読書に勤しむ男の子にむけた。 「杉山。剛志。お前らも教室いたんなら何とかしとけよ。」 「いや、俺には関係ないし、 どうせ無意味なのに関わる必要ないだろ」 本に目を落としたまま淡々と喋る彼、 堂山 剛志(どうやま つよし) の言葉に賛同して私も頷いた。 チヤホヤされるのは大好きだけど、 あんな軟派男を本気で相手にするわけがない、 何より翔くん以外の男子に目移りすることはまず有り得ない。姫乃木桜子とはそーいう女だ。 勿論翔くんだってそれはわかってはいるだろうが、 それでも彼氏としては気に入らないのは当たり前である。 「とにかくサクラ、あーいうのは無視しろ、 でもクラスと名前は覚えておく、 わかった?」 「はーい」 笑顔で手をあげて返事をする桜子てんで守る気はなさそうだ、 なんたって桜子がチヤホヤされるより好きなことは 翔くんにヤキモチ妬かせることなのだから、 桜子の態度に不安のため息をつきながら 翔くんは奥の方の自分の席へと向かった
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