曖昧日和

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「ルミちゃん?ルミちゃんってば」 私の名を呼ぶ桜子の声 我にかえり前を見ると 桜子はプリントの束をヒラヒラとさせていた 「なにボーっとしてたの? コレ後ろにまわしてって」 「あぁ、うん」 私がもの思いにふけってる間にも ショートホームルームは着々と進んでいたのだ 言われるままに一枚プリントを手にとり 後ろの席の美羽ちゃんに残りを渡した 「どーせ、理男くんのことでも考えてたんでしょ」 プリントを受け取りながらニヤリと笑う美羽ちゃん 「うるさいなぁ」 ムッとしてそう言ったものの 図星なので仕方がない 「ソレ以外にも考えることたくさんあるのにねぇ」 更に後ろの人にプリントを渡してから 美羽ちゃんがそう呟いた 「例えば?」 「だからコレとかさ」 そう言ってもらったばかりのプリントをヒラリと私に向けた B5サイズの白い紙の上部に 他の文字列より少々大きな文字が並んでいる そこに踊る文字が私を現実世界へと引き戻す 『進路希望調査表』 ずっと考えていた でも答えを見つけられなかった イヤ答えを決める勇気がなかった 決めてしまえば何かが変わってしまう そんな気がするから 恋も未来も何もかもが不確かで前が見えない でも前へ進めと時間が背中を押す 高校二年の秋 私の毎日は曖昧日和
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