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「就職希望?」
「ルミちゃんが?」
クッキーを摘んでいた手を止め桜子と美羽ちゃんは驚いた顔でこちらを見た
「う…うんっていっても
まだ決めたわけじゃないけど」
予想以上の反応に少し戸惑いながら
答えてカップの中の紅茶をグイッと飲みほした
放課後、調理部の活動として作ったクッキーを広げてのティータイム
雑談の話題として今朝配られた進路調査についてを上げてきたのは美羽ちゃんだった
それで希望進路を問われ
意を決して答えた結果はやはりこの反応だ
「うちの学校から就職なんて
ほとんどいないじゃーん」
桜子の言葉は正しい
確かに中高大一環教育を詠うこの学校では
附属の富大に半数以上の生徒が進学を希望する
残りの生徒も大半が外部の四年大を受験する
就職どころか専門学校希望者すら殆どいない
県内でも片手の指折りに入る進学校なのだ
「そんなにヤバいの?雪花さんの本」
美羽ちゃんが予想通りの質問をしてきたので
思わず苦笑して言った
「昔よりは確かにイマイチだけどそこは大丈夫、
美羽ちゃんみたいに根強いファンもいるし」
私のママは小説家で
中学時代から美羽ちゃんはママの小説を愛読してくれている
実際は中高校生が見て面白い話じゃないらしいのだが
美羽ちゃん曰わく『魅惑の大人の世界』らしい
因みに私はママから小学生の頃
閲覧禁止を言い渡されて以降
一度もママの作品を読んだことはないのだ
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