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りんを娶る事がこの広い屋敷に一瞬にして広まった。
陰で反対するものは少なくはなく、どうにかならないかと策略をたてるものも。
りんは、そんな事は知らずに沙羅と共にいた。
「わぁ―!!きれい―…」
沢山の家具に彫刻されているものは、派手すぎずに地味すぎず、だが繊細で高価なものだということは一目瞭然である。
中にしまわれている、着物は全て肌触りがよく色合いも綺麗なものだ。
「ささっ、屋敷を案内いたしますわ。りん様」
りんさま と呼ばれた事に躊躇いを持っていたが、優しげな微笑みにりんは沙羅に馴染んでいった。
綺麗なものを見ると、綺麗と言い、素敵と言い、嬉しそうな表情をするりんはひどく素直で可愛らしく、そんな人に慣れていないのか戸惑っていたのは沙羅もであった。
近くにいた人間は浅ましいなどと決めつけ蔑んでいた妖怪も、りんの言動や行動などで警戒心を溶いていた。
「りん様」
「広くて覚えきれないなぁ―…
迷子になっちゃいそう」
てへへ、と笑う様子が何とも微笑ましげである。
「迷子になってしまわれたら迎えにいって差し上げますわ」
「えへへ、ありがとうございますっっ」
(こんな正直に礼をいうものは珍しいわ……。りん様は素直なお方…。まるで―………………)
「沙羅さま?」
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