第一章・西国

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りんを娶る事がこの広い屋敷に一瞬にして広まった。 陰で反対するものは少なくはなく、どうにかならないかと策略をたてるものも。 りんは、そんな事は知らずに沙羅と共にいた。 「わぁ―!!きれい―…」 沢山の家具に彫刻されているものは、派手すぎずに地味すぎず、だが繊細で高価なものだということは一目瞭然である。 中にしまわれている、着物は全て肌触りがよく色合いも綺麗なものだ。 「ささっ、屋敷を案内いたしますわ。りん様」 りんさま と呼ばれた事に躊躇いを持っていたが、優しげな微笑みにりんは沙羅に馴染んでいった。 綺麗なものを見ると、綺麗と言い、素敵と言い、嬉しそうな表情をするりんはひどく素直で可愛らしく、そんな人に慣れていないのか戸惑っていたのは沙羅もであった。 近くにいた人間は浅ましいなどと決めつけ蔑んでいた妖怪も、りんの言動や行動などで警戒心を溶いていた。 「りん様」 「広くて覚えきれないなぁ―… 迷子になっちゃいそう」 てへへ、と笑う様子が何とも微笑ましげである。 「迷子になってしまわれたら迎えにいって差し上げますわ」 「えへへ、ありがとうございますっっ」 (こんな正直に礼をいうものは珍しいわ……。りん様は素直なお方…。まるで―………………) 「沙羅さま?」
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