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「……感じた?」
「……まぁまぁ」
着衣の乱れを冷静に直す撫子に翔斗は不満そうな目をする。
押し倒した身を起こして、再び画面に目を遣った。
次回予告が流れる。
「テクニックだけはなぁ……。勉強出来るもんじゃねぇし」
「だから、まぁまぁ良かったってば。ただ、もっと憎しみで私を襲って欲しかった……。人間のエゴで愛撫するって感じ」
翔斗は「ふーん」と曖昧な返事を撫子に寄越した。
撫子もコマーシャルに視線を戻す。
そのコマーシャルに撫子の父が爽やかに映っていた。
「感じる、とか、そこら辺の技量は女優に必要な訳でさ。男優はやっぱり細やかな指先の動き」
「いかに感じさせるような演技をするか。女は感じたくないときには感じられないと思うよ」
撫子は翔斗の手に指先を絡めて彼に向かい合う形で跨る。
次は撫子の力説が始まる。
翔斗は額を合わせる彼女の吐息を身近に感じながら触れられないもどかしさを知った。
撫子は淡い笑みでいちゃついてくるだけなのだ。
「分かる……? 男の子はこれだけで欲情する。女の子だって同じだよ? 好きな人に触れられればキスをしたいし、それ以上だってしたい……。じゃぁ、相手が嫌いな人なら? 嫌いだからこそ、乱してやりたくならない? 優越感と快楽は紙一重だと私は思うの……。さっきの男には負のオーラが足らない。『コイツを快楽で殺してやる……』くらいの勢いがなくちゃね」
撫子はふふっ、と笑って翔斗の頬にキスをしてから降りた。
翔斗は複雑そうな顔をして再び考え込む。
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