元(もと)

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朝からインターフォンがなった 「誰だよ……」 俺はベットの中で呟いた ずっと鳴っていた のそのそ起き、下へと足を運んだ 玄関に靴が無い… どうやら両親達は仕事へ行ったらしい まだ鳴りつづけるインターフォンに少々苛付きながら出るとそこには俺と同じぐらいの奴が立っていた 「なんだよ…」 「初めまして!向の家の杉坂夏琉です よろしくね!」 「……」 初めて言われた… 『よろしく』…なんて… 「上がるね」 普通に家に入り込んだ杉坂って奴はずかずかとリビングへ入って行った 「おい…」 「大丈夫!おばさんに頼まれたんだ ご飯を作って置いてくれないって」 ババァが… コイツに… 「ねぇ?どのお皿使って良いの?」 「なんでも良いんじゃない…?」 杉坂は わかった とだけ言い、料理し始めた 「食べるでしょ?君のお茶碗とか…どれ?」 「無い」 「え?」 俺のものなんてとっくに捨てられた 「…」 「じゃぁ、これでいい?」 と言って出されたのは父親の茶碗だった 「あぁ…」 これが知られたら間違いなく俺は… それから数分後、 テーブルが料理でいっぱいになり、美味そうな匂いが漂っていた 「…」 「……??どうしたの?」 「いや…」 俺はただ黙って食った そこへタイミング悪く酔っ払った親父が帰って来た 「あれ?おじさん帰って来たっぽいね」 「!?」 俺はビクッと体が震えた 「おぉぅ夏琉君かぁ~今日はありがとなぁ」 親父が杉坂に向かって言った 「いえいえ…今日は克法君に会えたんで良かったです」 親父は俺が座っていた椅子とテーブルを… いや、正しくは俺の使っていた茶碗を見た 「んぁ~?俺の茶碗じゃねぇかぁ」 変な汗が俺の体に流れる そこに杉坂が 「あ、すいません…勝手に…」 「いんやぁ…いいんだぁ~きにするな~」 杉坂は食器を片付け、荷物をまとめ 「じゃぁ、お邪魔しました」 と言って帰って行った いやだ…一人にしないでくれ…… 杉坂…… 「おい…てめぇなんで俺の茶碗使ってんだよぉ…汚くてもう使えねえじゃねぇか」 「……」 俺は後ろに立っていた親父を見ることが出来なかった 怖い…親父が…… 「どうすんだ?これをよ!!」 親父は自分の茶碗を割ると俺の髪を掴み、茶碗の破片が散らばった床に押さえ付けられた 破片が頬に食い込み血が流れる 痛い…… それしか思わなかった…
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