4181人が本棚に入れています
本棚に追加
エルシアとアルタのやりとりを見て苦笑いしていると、
「荒上」
不意に後ろから呼ばれた。
振り向いてみると、鋼輝が腕組みをしてジッと俺を見ていた。
「かてぇなぁ。勝矢でいいよ」
「そんな事はどうでもいい」
俺がわざわざ優しくしたコミュニケーションを一蹴してきやがった…
俺は頭をかきながら鋼輝の方に体を向ける。
「そうですか…んで、なんだ?」
俺が鋼輝に尋ねてみると、腕組みを解き、スッと両目を閉じた。その時、
「―ッ!!」
キッと目を鋭く開け、鋼輝は右の突きを俺の顔面めがけて放ち、鈍い音が響いた。
「なっ、なんだぁ!?」
「…!?」
後ろで風羅や蒼菱、その他みな驚きの声を上げた。
アルタに殴りかかろうとしたエルシアも動きを止め、俺たちに目を向ける。
「………いきなりだな」
冷や汗を一筋ながし、呟く。
眼前で迫ってくる突きを左手で受け止め、受け止めた拳から鋼輝の顔へと視線を変える。
「…ずいぶんとまあ、お強くなりましたなぁ、鋼輝さん」
「…ふん」
鼻で笑った鋼輝は右手を戻し、俺も左手を下ろした。
「もう少し本気でやれば、貴様の手ごと顔面に叩き込んでやる事も出来たんだがな」
鋼輝は正に自信に満ちたような笑みを浮かべて言ってきた。
「だろうな。さっきのでな~んとなくそう思った」
「貴様も、随分と腕を上げたようだな…」
「"あれから"すぐにいろいろあって、必死こいて頑張ったからな。でも、今やったらわかんねえかもな」
「わかるだろ?俺が勝つって事を」
「言うねぇ鋼輝くん」
最初のコメントを投稿しよう!