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そんな状態のミージェに向け、銀の刃が風を切って左斜め上から振り下ろされる。
ミージェがそれを頭を右に下げてかわすと同時に、右手に握ったステッキを背中越しから振るった。
「うあっ!!」
バシリという音と、痛みにより出た声が重なり、蒼菱の乱暴に振るわれていた腕が止まる。
それを見計らってすぐさま後退したミージェは、握ったステッキを手に叩きながら蒼菱を見つめる。
蒼菱は叩かれた右頬をさすりながら、表情には困惑の色が伺える。
「見えなかったの?」
「…視界に何かが飛んできたとしかわからなかったわ」
蒼菱は頬にミミズ腫れのような線状に腫れた箇所を押さえた手を離し、日本刀を両手で握りしめる。
ミージェもステッキを蒼菱に向けて構え、顔にかかった前髪を手でかき分ける。
「…っ!!」
蒼菱は突進しながらミージェに迫り、ミージェもすかさずステッキを動かす。
青の棒と銀の刃がぶつかり、体をすれ違わせて振り向き様にそれぞれが交差する。
そんなお互い攻めて攻められを繰り返し、互いの体に傷が出来始めた。
しかし…
「ハッ、ハッ」
「フゥ…フゥ…」
傷も多く、体力も激しく消費しているのは、蒼菱だった。
腕や足には頬に出来たのと同じ 線状の腫れが至る所に出来上がっていた。
(……強い。私の刀の軌道が完全に読まれてる。なのにミージェのあの棒の動きが全く読めない…)
ステッキを左右にしならせながら自分を見据えてくるミージェを見つめながら、摺り足で少しずつ近付いていく。
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