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(私の太刀速度じゃ簡単にとめられちゃう…かといって受け身に回っても、彼女からは仕掛けてくる気配もない……)
蒼菱は少しずつ接近して行きながらも考えを巡らせる。
一方のミージェは乱れた息を落ち着かせ、冷静に近付いてくる蒼菱を見つめる。
(…………しかたない)
蒼菱は刀身を左腰にささった鞘にしまい、両足を広げて腰を落とし、構える。
(……何かくるわね…)
ミージェはステッキの先を相手に向ける構えをとり、表情を引き締めた。
しかし…蒼菱は構えてからピクリとも動こうとせず、真っ直ぐにミージェを両眼で捉える。
(…?向かって来ない……誘ってるのかしら)
ステッキを握る手に力を込め、試しに一歩踏み出した。
瞬間、蒼菱の肩がピクリと動く。それを見るなり、ミージェは確信を得た。
(誘ってるんならその誘い……乗ってあげようじゃない…!)
水平にステッキを振り、床を強く蹴って ミージェは真っ直ぐに駆け出した。
その途端に蒼菱はさらに姿勢を低く構え、柄を握った右手に力を入れて強く握りしめた。
(さあ、何がくるのかしら!?)
小さく笑みを浮かばせながら 一直線に蒼菱との距離を詰める。
ミージェが一歩踏み込んだ瞬間、蒼菱の眼の光が鋭く放たれる。
身の危険を肌で感じたミージェは額から冷や汗を吹き出し、ステッキを自分の前にかざした。
途端に、ミージェの握るステッキが真っ二つになり、切り離された先端部が頭上に舞う。
驚愕と困惑が入り混じる中…
「『瞬切・一刀線』(しゅんせつ・いっとうせん)」
透き通った声が、ミージェの耳に届いた。
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