力試し

41/78
4179人が本棚に入れています
本棚に追加
/460ページ
風羅に対してのムカムカは置いといて… まだやってないのは俺と鋼輝の2人だけ。 鋼輝に視線を向けてみると、眼を閉じて腕を組ながらジッと立っている。 ………寝てんのか? などと疑問に思っていると、丁度いいタイミングで向かい側の灰色の扉が開かれた。 そこから出てきたのは、ガタイのいい男。 肩までしかない服からは、大木のように太い腕が露わになっている。 「……京連 鋼輝」 男は鋼輝の名前を呼び、前に歩き出てくる。 「…………」 眼をゆっくりと開け、組んでいた腕を解いて前に歩み始めた。 横から見た鋼輝の眼は、すでに戦闘モードに入っていた。 「自分の名はディング・オフリスと申します。一つ、よろしく頼む」 礼儀正しく頭を下げて名乗った男、ディングはそれの後、すぐに構えに入った。 あちらもやる気に満ちている様子で、拳が堅く握られているのがわかった。 「…………」 一方の鋼輝は黙ったまま、構えすらとらずに棒立ちしている。 「……構えは?」 その様子を見て怪訝な顔をしたディングは鋼輝に尋ねた。 しかし鋼輝は返答せず、ただディングの姿を眼に捉えながら一向に構えをとろうとしない。 それを返事としたのか、ディングは表情を引き締め、床を蹴って駆け出した。 真っ直ぐに姿勢を低くしながら走り、大きな拳を握って鋼輝に迫る。 「…………」 なおも構えをとらない鋼輝に、豪腕が唸りながら突き出される。 ――瞬間、鋼輝の鋭い眼の光に、更に鋭さが増した。
/460ページ

最初のコメントを投稿しよう!