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風羅に対してのムカムカは置いといて…
まだやってないのは俺と鋼輝の2人だけ。
鋼輝に視線を向けてみると、眼を閉じて腕を組ながらジッと立っている。
………寝てんのか?
などと疑問に思っていると、丁度いいタイミングで向かい側の灰色の扉が開かれた。
そこから出てきたのは、ガタイのいい男。
肩までしかない服からは、大木のように太い腕が露わになっている。
「……京連 鋼輝」
男は鋼輝の名前を呼び、前に歩き出てくる。
「…………」
眼をゆっくりと開け、組んでいた腕を解いて前に歩み始めた。
横から見た鋼輝の眼は、すでに戦闘モードに入っていた。
「自分の名はディング・オフリスと申します。一つ、よろしく頼む」
礼儀正しく頭を下げて名乗った男、ディングはそれの後、すぐに構えに入った。
あちらもやる気に満ちている様子で、拳が堅く握られているのがわかった。
「…………」
一方の鋼輝は黙ったまま、構えすらとらずに棒立ちしている。
「……構えは?」
その様子を見て怪訝な顔をしたディングは鋼輝に尋ねた。
しかし鋼輝は返答せず、ただディングの姿を眼に捉えながら一向に構えをとろうとしない。
それを返事としたのか、ディングは表情を引き締め、床を蹴って駆け出した。
真っ直ぐに姿勢を低くしながら走り、大きな拳を握って鋼輝に迫る。
「…………」
なおも構えをとらない鋼輝に、豪腕が唸りながら突き出される。
――瞬間、鋼輝の鋭い眼の光に、更に鋭さが増した。
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