4181人が本棚に入れています
本棚に追加
「フー…フー…」
口に溢れる血を吐き捨て、乱れた息を少しずつ整えていく鋼輝。
その様子を見据えながら、ディングはゆっくりと構える。
(………ダメージを受けすぎた。腹にもらったのはまずかったな…足にき始めてきた)
鋼輝は自分の足に視線を落としながらも、着実に呼吸を落ち着かせる。
(…無駄に長引かせれば、やられるのはコッチだ。………)
「フーー……!」
大きく息を吐き出し、両手を拳にした鋼輝は、両手とも脇をしめて引き、前傾姿勢をとっていつでも突っ込める体制に入る。
途端に、鋼輝の纏っていた雰囲気が重く、険しくなる。
「………」
鋼輝の雰囲気を感じとったディングも、さらに腰を落として構えを固める。
お互いがピタリと動かなくなり、訓練場内の空気が張り詰めていく。
両者が互いを見据えながら、身動ぎ一つしない。
その時、
―ダンッッ!!
強く床を蹴り出し、鋼輝は姿勢を沈めて突進していく。
赤みがかった長髪を靡かせ、標的に向かって一直線に駆ける。
ディングは素早く装甲に包まれた腕を構え、足幅を広げて踏ん張った。
「………」
その姿を見て、灰色に包まれた空間を突き抜ける鋼輝は拳を解き、平手に切り替えた。そして
「【崩掌撃】(ほうしょうげき)!!」
鋼輝は硬い装甲に覆われた両腕めがけて両手で掌底を繰り出され、それらが直撃する。
「ッ!グッ!!」
途端に呻き声を上げたディングは、苦痛に顔を歪めた。そして、掌底を受けた両腕がダラリと垂れ下がる。
そんな彼の懐に潜り込んだ少年は、そこで小さく 呟いた。
「…【双衝砕】(そうしょうさい)」
最初のコメントを投稿しよう!