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鋼輝の固く握りしめられた両拳が、ディングの硬い腹筋に覆われた腹部に大きく、鈍い音を響かせて深々と突き刺された。
夥(おびただ)しい量の赤い液体を口から吐き出し、ディングは後方に大きく弾け飛ばされ、床に落下した。
「フゥ、フゥ、フゥ……」
「ゲホッ!…ガハッ!」
床で咳き込み、血を吐き出すディングを、真っ直ぐに見下ろしている鋼輝はゆっくりと突き出された両方の拳を下ろす。
「………え、もしかして…勝っちゃったの…?」
「……ま、マジで…?」
「…つ、強すぎやん……」
「あ、あぁ……」
その光景を、眼を点にして呆然と見つめる俺たち見学組は、それぞれ言葉を発して固まる。
いやまさか…天使を倒しちゃうとは思っても見なかったわけだし……。
あのヤロー、マジで強すぎだろ……。
「まだ、やるのか…?」
見下ろしながら尋ねる鋼輝の眼光は、未だ鋭い。
恐らく、まだ来ると思っているんだろうな。
と、ここで…
「は~い!終了ですよ~~!!」
訓練場に、シーリンさんの終了の声が響きわたった。
「鋼輝くん、お疲れ様!もういいよ!」
「………」
シーリンさんの言葉に、鋼輝は何も答えずに体の向きを変え、歩き出した。
「しかしディングくん。なんでいつもキミは肝心な時に受け身に回るかな~…キミの悪いクセだよ?それ」
シーリンさんの言葉に、ピクリと鋼輝は反応し、立ち止まった。
「っ……スミマセン」
小さく謝罪したディングは、ゆっくりと体を起こし、立ち上がって口から流れる血を拭った。
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