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「………」
その様子を口を閉ざしたまま見つめる鋼輝は、じっと立ったまま動こうとせず、ディングに視線を送り続ける。
「…京連鋼輝」
口元から伝う赤い液体を腕で拭いながら、ディングは鋼輝の名前を呼んだ。
「………」
何も答えずに、真っ直ぐに自分を見つめてくる鋼輝を両眼で見据え、フッと笑みを零したディングは、口を開かずに踵を返して扉に向かって歩き出した。
その後ろ姿に視線を送る鋼輝も、スッと歩みを進めた。
「ごくろーさん、鋼輝」
「………ふん」
労いの言葉をかけたのに、無愛想な返事が返ってきた。
まあ、腹立つっちゃあ立つけど、なんとなくそんな感じで返ってくるとは思ったけど…
「しっかしすごいなぁアンタ。あの天使倒してもうたやんか。強すぎやでホンマ」
感心した表情で鋼輝に近付きながら話しかけた波瑠。
しかし、鋼輝の表情はそれとは逆に、どこか暗い。悔しさみたいな物が見える気がする。
「……奴が少しでも本気を出していたら、全く歯が立たなかったろうがな」
「はぁ?アンタ結構押しとったやんけ。あれやったらいい勝負できたやろ」
「俺の攻撃は 外面より内面に響かせる物だ。いくつか筋肉と神経にダメージを与える技を使ったが、全く効果は見れなかった。
見えてもほんの一瞬。そこそこのダメージはあっただろうが、奴の防御力の前には無駄だったようだがな」
「……へ、へ~…」
鋼輝の言葉に、波瑠は口元をひきつらせた。
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