力試し

52/78
前へ
/460ページ
次へ
住み慣れた王宮の通路を、退屈そうにフラフラと歩きながら進むキサリは、口笛を吹きながら何をしようか悩んでいた。 恐らく、ろくでもない事を考えているのは間違いないだろう。 「そう言えば、今選抜者の連中が訓練場で遊んでるんだったっけ……」 ふと、キサリは思い出して呟いた。 「でも父上に絶対に行くなって言われてるし…何もしないって言ってるのに。…あのヒゲ」 愚痴をこぼしながら、父親を貶すキサリ。当人が聞けば、まず黙っていないであろう言葉を吐く。 「まっ、いいか!ワタクシは王の一人娘なんだし、何しても許されるでしょうし、ちょっと見に行こうっと」 一般からして間違った考えをしている。だが、キサリの性格上、それが一般なのだ。 いわゆる、究極の自己中心的思考にして、最高の我が儘娘。 彼女の父親は、心底手を焼いたのだろう。 「……あら?」 ふとキサリの眼についたのは、一つの扉。 他の部屋とは違う、訓練場と同じ、灰色の扉。 (ここって確か、戦士たちが使ってるトレーニング器具とかがある部屋……ちょっと入ろっ!) 思うがまま進むキサリは、灰色の扉を開けて中に入っていった。 「うわぁ、埃臭いわねぇ…」 顔の前で手を仰ぐキサリは、しかめっ面をして中に歩みを進める。 サンドバッグのような叩く物や、所々に的(まと)がある 恐らく、魔人を連想した人型の板。 その他にも剣や槍、ハンマーや鎌などの武器も置かれている。 そんな中を進んでいくと、奥の方にポツリと置かれている あるものに眼が止まった。 それは古く、異常にサビレた黒く、大きな鎧。
/460ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4181人が本棚に入れています
本棚に追加