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住み慣れた王宮の通路を、退屈そうにフラフラと歩きながら進むキサリは、口笛を吹きながら何をしようか悩んでいた。
恐らく、ろくでもない事を考えているのは間違いないだろう。
「そう言えば、今選抜者の連中が訓練場で遊んでるんだったっけ……」
ふと、キサリは思い出して呟いた。
「でも父上に絶対に行くなって言われてるし…何もしないって言ってるのに。…あのヒゲ」
愚痴をこぼしながら、父親を貶すキサリ。当人が聞けば、まず黙っていないであろう言葉を吐く。
「まっ、いいか!ワタクシは王の一人娘なんだし、何しても許されるでしょうし、ちょっと見に行こうっと」
一般からして間違った考えをしている。だが、キサリの性格上、それが一般なのだ。
いわゆる、究極の自己中心的思考にして、最高の我が儘娘。
彼女の父親は、心底手を焼いたのだろう。
「……あら?」
ふとキサリの眼についたのは、一つの扉。
他の部屋とは違う、訓練場と同じ、灰色の扉。
(ここって確か、戦士たちが使ってるトレーニング器具とかがある部屋……ちょっと入ろっ!)
思うがまま進むキサリは、灰色の扉を開けて中に入っていった。
「うわぁ、埃臭いわねぇ…」
顔の前で手を仰ぐキサリは、しかめっ面をして中に歩みを進める。
サンドバッグのような叩く物や、所々に的(まと)がある 恐らく、魔人を連想した人型の板。
その他にも剣や槍、ハンマーや鎌などの武器も置かれている。
そんな中を進んでいくと、奥の方にポツリと置かれている あるものに眼が止まった。
それは古く、異常にサビレた黒く、大きな鎧。
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