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「……何このきったない鎧、しかも気味が悪いわ…」
近寄っていったキサリが、壁を背に床に座った形の鎧を足先でコンコンと蹴りながら呟いた。
光がささない一番奥に置かれているからか、薄暗さのせいで奇妙な不気味さが漂っている。
「………それにしても…」
不意に、キサリはポツリと言葉を零し、黒い鎧を見下ろしながらここで言葉を切った。
(他の物より異常にボロい。それに、トレーニングように鎧なんて使うの?これ着て鍛えてんのかしら………。でも、それにしては大きさが半端じゃないし、やけに傷だらけ。
……魔人を仮想して作ったのかしら…)
「……?」
珍しく真剣な眼をして考えながら、鎧の周りを歩いて観察していたキサリは、ふと、鎧の背中側にボタンのような物を見つけた。
「何かしら………よぉし…っ!」
腕捲りし、大きな図体を力いっぱい引っ張って背中が見えるように動かした。
ズズッと重い物が動く床と擦れる音をさせ、鎧は少しずつ動いた。
「ん~…!………ぷはぁっ」
力を抜いて息をついたキサリは、背中側を覗き込む。
「……ん?何かしら、このボタン…」
そこには順に、赤色と青色、そして白色の押しボタンが設置されていた。
(確か……白色が訓練場へ移動させるためのテレポートボタンだから…、青色が起動ボタンで、赤色が停止…かな?)
ん~、と唸りながら考えるキサリは、すぐに考えるのをやめた。
頭を使うのが面倒になったのか、再び気の抜けた表情になった。
「とりあえず!押してみようかな!」
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