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俺はゆったりと鎧のある訓練場の真ん中へと歩きだした。
準備はできてる。他のみんなの戦ってるとこを見て、やる気満々になってたしな。
「勝矢くん」
鎧に向かって歩いていると、シーリンさんが俺の名前を呼んだ。
「やる気になっている所水を差すような事を言ってしまうが、その鎧によって怪我した天使たちは、みんな例外なく重傷だったんだ。
腕の骨が折れたり、足が変な方向に曲がったり、酷いのじゃ背骨が粉砕されてたんだ」
「……………」
し、シーリンさん………
なんで、今そんな事言っちゃうの?
せっかくやる気になってたのに、急に怖くなってきちまったじゃねーかよ……
「…………」
「どうした~勝矢!立ち止まって~!」
「いや…あの…やっぱ、やめたいんだけど…」
「はあ!?何ビビってんだよ勝矢!!行け!!やっちまえ!!」
「そうや勝矢!!やったれ!!」
は、波瑠までそんな……
クソ、シーリンさんがあんな事言うから…!!
―ギギッ…!
「……ん?」
ふと、錆びた鉄同士が擦り合わされるよな鈍く低い音が鼓膜に届いた。
その音のした方向に顔を向けてみると、黒い鎧がギシギシと軋むような嫌な音をさせながら動き始めていた。
「………そういや……」
小さく口から出た言葉は、鎧の錆びの擦れる音によってかき消される。
顔の部分に、眼と思われる所に赤い光がカッと灯り、鎧が一歩踏み出してきた。
「…もう……スイッチ入ってるんだったっけ……」
そう言った瞬間、巨大な黒い鉄の塊が、見た目とは予想外に恐ろしい速度で俺に向かって突進してきた。
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