4181人が本棚に入れています
本棚に追加
シーリンさんとやった時よりも、体全体に力が入る。
後頭部から流れてる血が、顔の方にも流れてくる。
この緊迫感がたまらない。
力が湧き出てくる。いつ以来だろう、こんな気分になったのは……
勝てる勝てないの前に、暴れたい。存分に、湧き出てくる力を出したい。
その相手にあの鎧は、絶好の相手だ。
生き物じゃない。ただの黒い塊だ。
「…………」
「…………」
風羅と波瑠は、何も言わずに俺の背中を見つめてくる。
が、少しして二人はその場から去っていった。
「…………」
パキパキと指の骨を鳴らし、鎧の方に歩き出す。
それに合わせるかのように、鎧は床を強く蹴り、勢いよく突進してきた。
あっという間に距離を詰め、黒く大きな左の拳を構えて突っ込んでくる。
「―ッ!!」
俺は突き出されてくる鎧の腕を、素早く振るった右拳を外側に当て、鎧の腕の軌道を変えて、入れ代わるように鎧の後ろ側に移動。
「―フッ!!」
鎧が振り返った所に、強く握り、固めた両拳を鎧の胴体に、左右順に間を空けずに一発ずつを叩き込んだ。
「…!」
後ろに数歩後ずさった鎧が、右拳を振りかぶるのを視界にとらえ、俺も右腕を後ろに引く。
空気を唸らせ、俺の顔面めがけて放たれる鉄の拳。
「――【デビル・」
頭を下げ、鉄の拳とすれ違うように鎧の懐に飛び込み、引いた右拳にさらに力を込めて…
「ブロー】!!」
鎧の黒く、堅い胴体に思いっ切り叩きつけ、鎧の巨体をパンチの威力で後方に吹き飛ばした。
最初のコメントを投稿しよう!