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「ンン…ッ!!」
力を込めるにつれ、ビキビキと右腕の筋肉が軋み、血管がうっすらと浮き上がり始めた。
拳の先端から肩までの区間全ての部分に力を注ぎ、小刻みに痙攣のように震え始めるのがわかる。
なおも力を注ぎ、腕が筋肉によって膨れ上がっていく。
―ズキンッ
「…ツッ!」
右腕の筋に疼くような痛みが走り、俺は一瞬顔を歪めるが、力を腕に込め続ける。
「……………!」
「…あ?どうしたよ」
灰色の扉付近、勝負を見ていた鋼輝が一瞬ピクリと反応し、それに気付いた風羅がすかさず声をかけた。
「………あのかまえ…」
「ああ、テメーは見んの初めてか。ありゃあすげーぞ!?勝矢の最高の技だからな!」
何故か自慢げに話す風羅だが、その事に鋼輝は気にせず、ジッと見つめる。
(一瞬 荒上の表情が歪んだように見えた。あの技…見るからに相当腕に負担がかかるようだな…)
眉を寄せながら、鋼輝は思考を巡らせていく。
「あの技が確実に当たってりゃあエルシアちゃんの兄貴にも勝てたかもしんねーのになぁ……」
「…………という事は、二度目か…」
「あ?なんか言ったか?」
「独り言だ。黙って勝負に眼を戻せ」
「ぐっ!…いちいちムカつく言い方しやがって……!」
握り拳を作って怒りを露わにする風羅には眼も向けず、鋼輝は腕組みをしながら口を真一文字に結んで見つめる。
(二度目であの表情。限界にまでパワーを込める集中力と疲労は並じゃないはず……奴はあと何度あの技が使えるのか……)
「…どれほどか、見せてもらうぞ…」
唇を釣り上げ、鋼輝はポツリと呟いた。
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