俺と天使の不思議な日常

力試し

「………」

小刻みに震える右腕全てに、限界にまで力が溜まった。

膨れ上がった筋肉で張り詰めた腕をゆっくり動かし、体の前で構える。

「…………？」

構えたところで疑問に思った。

鎧が、一向に来る気配がない。

ピクリとも動かず、ただじっと立ち尽くしている。

（……魔人並みの知識持ってるから、警戒してんのか？いや、それなら感情まである事になる。それはないとしたら…なんだ？）

考えてる間も、鎧は全く動かない。

……考えていてもしょうがない。来ないんなら、コッチから…！

勢いよく床を蹴り、全力で鎧に向かって走る。

「―っ！！？」

俺が走り出したと同時に、鎧が素早く動いた。

あのヤロー、まさかこれを狙ってたのか…？

やりやがるぜ、ちょっと困惑しちまったじゃねーか……

「―おもしれぇ……！」

膨れ上がった右腕を大きく後ろに振りかぶって一気に鎧との距離を詰めていき、鎧は巨大な手を両方突き出してきた。

頭を下げ、しゃがみ込むぐらいに姿勢を沈めてかわし、強烈な風切り音が頭上でした。

左足で床を踏みつけて体を固定し、がら空きの胴体に狙いを定め、視線を突き刺す。

一直線の軌道で右拳を、風を唸らせながら目標めがけて打ち放ち、叫ぶ。

「【デビル・ブレイク】『悪魔の壊撃』！！！」

拳が胴体に直撃し、ド真ん中に受けた鎧を渾身の一撃を振り切って硬い巨体を後ろへ殴り飛ばした。