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くの字に折れ曲がって吹き飛んだ巨大な鎧は、大きな音を立てながら灰色の床を跳ね、転がっていく。
「ハァ…ハァ………ぐっ!」
殴りつけた右腕が痛み、左手で押さえて苦痛に顔を歪める。
膨れ上がった右腕の力をゆっくりと脱力し、元の腕に戻った。
(デビル・ブレイクは、あと打てて一回。打っちまったらもう右腕はまともに使えなくなる……)
右腕を強く押さえ、俺は起き上がろうとしている鎧を見ながら考える。
(打つなら最後。終わらせる時に打たねーとコッチがやられちまう。 同じ部分に当て続けて 脆くなった所に最後のデビル・ブレイクを当てて鎧を砕くしかない…)
左手を離して軽く振るように右腕をほぐしながら動かす。
鎧は立ち上がり、俺に向かって歩み始めた。
その胴体には さっきの一撃によって刻まれたヒビが入っている。
打つなら、あそこだな……
乱れた息を落ち着かせ、駆け出す。
やることは決まった。後はそれを実行するだけだ…!
「セェッ!!」
気合いとともに鎧の胴体にドロップキックを入れ、数歩後ろに下がった鎧の懐に飛び込み、ヒビのある部分に左拳を叩きつける。
振り払うように振るわれた黒い左腕を屈んでかわし、その体勢から突き上げるように右拳を同じ所へ。
スピードは俺の方が速い。鎧の動きをしっかり見続ければ、勝てるかもしれない……
「―ウグッ!!」
油断したとも言える瞬間に硬い右肘が頬を掠め、俺は慌てて気を引き締め直した。
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