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すぐさま飛んできた右拳を頭を振ってかわし、掠ってできた傷から血が飛び散る。
連続で、様々な角度から振るってくる二つの鉄の拳を上体を動かしてかわす。
拳を繰り出しながら前進してくる鎧から後ずさって距離をとる。
「…………」
ふと、不信に思った。
人間の俺がここまでやれるのに、天界の天使がやられるのはおかしいんじゃないか……と。
こんな程度で、何故天使が負けてしまうのか…いくらまだ戦士じゃないとはいえ、この程度ならなんとかなるはず……
なら、なんで………
「……!?」
突然視界がグラリと歪み、膝がカクンと落ちた。
そこに――
「―グブッ…!!」
巨大な鉄の拳が、俺の腹をモロに捉えた。
痛みに食いしばった歯の間から血が吹き出し、一瞬意識が遠のいた。
続けざまに左の拳が俺の顔面に叩き込まれ、首が後方へ弾け飛び、足が床から浮き上がった。
「ガハァ!!」
体が空中で床と平行になった所に、硬い右肘が俺の腹に打ち落とされ、勢いよく床に叩きつけられた。
(……まさか、コイツ………これを待ってたのか…?)
苦しみに体を折り曲げ、顔の横にある床にジワジワと広がっていく赤い液体を見つめる。
それは、俺の後頭部から出てくる、おびただしい量の血。
(出血のしすぎで、意識が朦朧とする。だからあれほど俺に打たせ、わざとかわさせる事によって体を動かせ、血の巡りをよくしやがったのか………)
「ガッッ!!!」
腹を蹴られ、跳ねるように転がっていく。
(魔人並みの知識とはいえ……ここまで完璧にコピーしてるとはな……)
全身に走る痛みをこらえながら、つい感心してしまった俺。
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