俺と天使の不思議な日常

力試し

「――…グッ！」

すぐさま起き上がり、鎧の方に体を向ける。

その途端、また眼の前がグラリと歪み、意識が遠のく。

（さすがに……ヤバい）

「―！！」

突然飛びかかってきた漆黒の塊が 巨大な腕を真横に振り回してきた。

間一髪の所で体を引いて後ろに下がる俺だが、足元がフラつく。そこに…

「グハッ！！」

もう片方の鉄の拳が俺の腹を突き上げ、くの字に折れて崩れ落ちそうになる。

「…ッッ！」

歯を食いしばり、なんとか持ちこたえた俺は、すかさず鎧の胴体に左拳を打ち込んだ。だが、

「ッ！？」

全く怯まず(怯むわけないが)、大きな手のひらに頭を鷲掴みされ、軽々と言った感じで俺を持ち上げた。

両手で必死に掴まれる腕を掴み返し、抵抗するがびくともしない。

「ぐっ……ガハッ！！」

もう片方の拳が俺の腹に深々とめり込み、口から鮮血が吐き出される。

息苦しさと激痛に顔を歪める俺に、さらに腹に拳が突き刺さる。

「ガッ！…グハッ！…ゲフッ！…ハアﾞッ！」

何度も、何度も腹に突き刺される硬い拳を食らう度に吐血し、意識が薄れていく。

「あっ、あれ…ヤバいんちゃうの…？」

「ヤバすぎる！殺されちまうよ勝矢の奴！！」

「た、助けないと…！！」

薄れる意識、そんな声が聞こえてきた。

情けねぇ、カッコつけて俺がやるとか言ってたくせにこのザマかよ……

せめて、やれるだけでも…やってやる…！

「……デ…デビル……ブローッ！！」

左腕に力を込め、遠のく意識を無理やり引き戻し、頭を掴む鉄の腕めがけ、突き上げる。